はんぶんくらいとうめいなまいにち

もうすこしだけ、わかりやすく、

あの公園 ②

通勤時間。と、同じように、文通する距離感。というのが、ちょうどいいなぁと思う。ときどき物足りなくなってしまうくらいが、愛おしさをますます強くする。空想と現実のあわいにあるわたしたちの生活について手紙や電話でおしゃべりする。ネイルポリッシュ。おーなり由子の文庫本。タオルケット生地のワンピース。映画のチラシ。リングノート。色違いのTシャツ。わかちあうことのうれしさを、はちみつであまくした紅茶といっしょにゆっくりと飲みこむ。春の夜でもさみしくない。さみしくない。

ぐるぐるまわる

すこし喉が痛いのと、夕方頭が痛いので帰宅後すぐに眠った。浅い夢のなかで、はじめて水車や仏像が出てきてふしぎな気持ちになった。化粧を落とすために気合で起き上がって入浴。回復の記録という日記本をぱらぱらとめくったり、花粉で目がかゆいので目薬をしたりした。

目薬はのどに味がしないと謳われた赤ちゃん用のものと迷ったけれど、アレルギーに効きそうなものを選んだ。すこし清涼感があるけれど、すぐに慣れることができてひと安心。何かを選ぶときパッケージに書いてあることから判断するしかないこと、仕方ないけれどなんかやだな。

植物のような呼吸で

世界が灰色がかって見える。天気のせいもあるかもしれないけれど、バスの中で観た映画がゆっくりしっとり進む、というか、曖昧で進んでいるのかいないのかわからない速度だったから、そう思ったのかもしれない。通学路を歩きながら、ぺかーっとひかるチューリップに胸焼けしながら、これでよかったのかもわからないまま、ふわっと終わりに向かってゆく。あまのじゃく。透明に引かれた線を踏まないようにして。

にんげんおやすみ宣言

SNSで生理が重い女を彼女にしない方が良いって投稿を目にした。確かに、と俯瞰しつつ内心ちゃんと傷ついてる。映画 生きてるだけで愛のラストシーン。寧子の『いいなあツナキ、私と別れられて』という台詞を思い出してちょっとだけ泣いた。ニキビができたという理由だけで外に出るのが億劫。なのにチョコチップクッキーが無性に食べたい。窓をあけると、さーっと雨粒の音がして嬉しいな。予報だと朝には止んでしまうらしい。真夜中を泳いでいるひとのために神さまがくれたオルゴールみたいだ。

奥行きのある氷を噛む

surgery。霧のような雨は前髪を濡らす。ごめんなさいって言われてないけどもういいよ。責任はふわふわと宙に浮いている。墨汁の匂いに気を引き締めて、一画ずつ。捨てる捨てる捨てる。チューリップの花びらのあいだに糸を張っておうちにしよう。わたしの単純が重なって、わたしたちの複雑になることについて、今もずっと考えている。

いつも傘がうまくさせない

みずたまりをよけているつもりでも、いつも靴下がぬれてしまう。傘を忘れたひとに「入ります?」と声をかけて、遠慮される。気まずいのでイヤホンからラジオを流してみる。life is struggle. わたしのなかに流れている時間と誰かのそれが重なるとき、第三者視点で脚本みたいなものが浮かんでくるときがある。これが映画のワンシーンだったら。と、ぼんやり思いながら歩く。きょうの晩ご飯はカレーライスにしようかな。

life is beautiful

除光液って字面だけ見るとすこしかなしいね。勢いだけで不動産屋さんに電話した。目当ての部屋を伝えると、前に住まわれていた方が亡くなっているので別のお部屋をご案内しますねと言われた。あの、ゆうれいっていると思いますか?と聞きたくなるのを堪えて、わかりましたと答える。わたしたちが生き急いでしまうのはどうしてだろう。蜜柑も爪も白いところが邪魔に見える。